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韓国人に登った日本百名山 続々篇

韓国人に登った日本百名山 続々篇

3.斜里岳(しゃりだけ)1547m北海道

清里のじゃがいも畑から

斜里岳の胴体はたくましく、骨格は力強い。北側の斜里町から眺めると、広々と広がる野原の端から山裾を八の字形に広げている。草原を海に代置するなら、山姿はまさに利尻山だ。やはりふるさと富士の一つでオホーツク富士とも呼ばれる。

アイヌ語で、当初の名前は「オンネヌプリ」。「オンネ」は「大きい、年を取る」、「ヌプリ」は「山」で、「大きい山」または「老いた山」と解釈する。賢い老人が広い平原の神によく仕えてくれ、ともすれば怒りっぽいオホーツクの海の神を落ち着かせてほしいという願いが込められた名前だったろう。

年老いた老人の能力が足りなくてその任務を果たせなかったのか、それとも人間の力が強くなり、賢い老人が要らない世の中が到来したのか。

「オンネ」は忘却され、代わりに山麓下の斜里町の名を取って斜里岳になった。シャリとは、この地域の地形的特色を表す言葉で、葦が生えた湿原という意味だ。

清岳荘からゆっくりと登っていた道が、下二股に着いたら尾根の道と沢筋の道に分がれる。沢筋の道を選ぶと、数え切れないほど徒渉しなければならず、力強く聞こえてくる滝の音に心を打たれる。沢筋の道は上二股で稜線と合流して終わる。

「股」は韓国語で「カランイ(가랑이)」である。その形を生がして二股コースは二股に分がれた道をいう。日本の山でよく見がける名前だ。この股に広い抱負と果敢な実行力を入れて「大きく股を広げる」または「世界を股にかける」という表現がある。

股は「カリ(가리)」に語源を置いている。韓国の加里山、加里王山、葛山、葛月山は全て「カリ」から由来した言葉だ。「クリ(구리)」は丸い円、つまり天を意味するが、「カリ」は四角、つまり地を意味する。そのため、太白山の天星壇は円形であり、地王壇は四角形だ。山は円形の天のから分かれた四角の地の中で、その頂点にあたる所だ。股を意味する’カリ’はここに起源を置いている。

股間は韓国語で「サッ(샅)」という。山の昔の言葉は「ダル(달)」または「ダリ(다리)」だ。また、身体の「ダリ(다리、脚)」は、地と天をつなぐという点で山のようなものであることから、そのように呼んだ。両足を広げた股間は山の姿だ。真ん中の頂点が「サッ(샅、またぐら)」だ。サッは両足が分がれる地点だが、幾何学的に何の面積も占めない空間だ。筆者はシャリは韓国語のサッと同じ意味だと思う。驚くべきことに、韓国語辞典には「サッザリ(삿자리、葦を編んで作った座布団)の昔語」という解釈もある。「サッ(샅)」とは分がれる部分を強調した名前で、「サッ(삿)」とは葦の弱い部分を強調した名前だ。

馬の背が頂上を隠している。二度も通ってきた二股の意味に気がついたので、馬が背中を出して待っていたのも分かっただろう。遠慮せずに足をまたいで、馬の背中にどかっと乗り込まなければならない。そうすれば、頂上は目の前だ。