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6.知的サロン

6.知的サロン

山書の会は「知的刺激を互いに与えるサロンであり,知的緊張感を漂わせる,といったサロンである」と水野は『月報』に書いている(2)。会員は,このとらえ方に賛成している。水野は「わが会はアルピニストの会ではない。アルパイン・クラブの一種であって,山岳に関わる会である。わが会はまたそれ自身の価値がある。自由な知的刺激を求めて進もうではないか」とその文を結んでいる(1)。
このことは会の方向性に反映されていて,会が組織し,何かを研究するということは一切ない。研究は個々の会員の恣意に任されている。『山書月報』への原稿も投稿が主になっているのも,この精神を尊重しているからに他ならない。
この頃は総体的に会員も高齢化が進み,創立期の会員で残っているのは水野と平田の2名だけになってしまった。若い会員も少なく,ハイキングなどはあまり積極的に行われなくなったが,山と山書に関する情熱を失うことなく,それぞれの「知的刺激」を満喫している。会員の山に関する活動は様々であり,紹介するのには紙数がいくらあっても足りないので,割愛するが,活動や研究の一端は『山書研究』に発表されるので,文末にその一覧を創刊号から順に示してあるので,参照していただきたい。

以上の「創立から小野体制まで」は上田が執筆。「会員数の推移」以降の報告は,水野の発表した文に負うところが多大である。水野が事情あって会務に関する執筆活動から遠ざかっているので,文献に挙げた資料によって沖が概要を記述し,上田が纏めた(文中敬称略)。
参考文献
(1)水野勉:「知的刺激を求めて」『山書月報』1982年7月,No.234, pp.2-3
(2)水野勉:「サロンとしての山書の会」『山書月報』1985年1月,No.264, pp.2-5
(3)水野勉:「小野さんを偲ぶ」『山書月報』2016年10月,No.645, pp.2-9