• Japan Alpine Book Club

8.『日本山書の会のあゆみ』を纏めた経緯 沖允人

『日本山書の会のあゆみ』を纏めた経緯                沖允人

2017年10月に,私は韓国に行く二つの用件があり,約1週間滞在した。一つ目の用件は,東海岸の束草(ソクチョ)市にある朴記念館(Park Memorial Museum)と国立山岳博物館(National Mountain Museum)の訪問である。朴記念館は私が50年前から親しくしていた朴鐵岩(パク・チュール・アン)先生(2016年7月没)の生涯とチベット奥地探検の業績を記念するために朴一家が設立した私設記念館である。国立山岳博物館は日本ではとても建設できないほどの大規模で,図書室,トレーニング室などの設備も整った博物館である。韓国本土の最高峰である雪岳山(ソラクサン)の山麓という絶好のロケーションにある。束草市は温泉と鮮魚市場でも知られている。

二つ目の用件は,ソウルにある山岳図書出版社「Haroojae Club」の訪問である。2015年に私が編集責任者で,日本山岳会創立110周年記念として出版した『インド・ヒマラヤ』の韓国語版の打ち合わせである。出版社「Haroojae Club」は会員制(約1400名)の出版社で,主に外国語の山岳書を韓国語に翻訳して出版・販売している。すでに約50冊を出版している。会員には年間4冊の翻訳本を無料で配布される。世界の山岳書から選定委員会で韓国の登山者に読ませる価値があると判断した本を選定し,翻訳出版している。日本語の本では,『山岳征服』(三木高嶺),『日本女性登山史』(坂倉登喜子・梅野淑子),『新稿 日本登山史』(山崎安治),『泉靖一伝』(藤本英夫)が選定されている。英語・独語・仏語・ポーランド語・中国語・台湾語の名著といわれる本も多い。

出版社の代表者 Byun, Gi Tae(邊起兌)氏と選定委員会の中心人物 Dong-Soo Kim(金東壽)氏と連絡をとることができ,私の束草市からソウルに帰る日に合わせて,昼食をはさんで翻訳の打合せを持つことになった。金東壽氏は韓國山書會(Korea Alpen Book Club,創立1960年頃,会員数約200名)の中心人物でもあることが分かり,彼は,以前から日本山書の会に関心をもっていて,創立のいきさつや活動や出版物を知りたいと思っていたらしいが,英語は堪能だが,日本語が分からないので困っていたといい,私にいろいろと質問した。私は,創立当初からの会員ではなく,30年ほど前に退会し,最近復活した会員なので正確なことは話せなくて,帰国してから知らせることになった。纏まったら韓國山書会の年報『山書(Korea Alpen Book Club Journal)』の2018年の第28号に,日本山書の会の歴史と活動を寄稿してもらいたいという依頼を受けた。また,打ち合わせ会に続いて,その日の夜に韓國山書會の月例会が開かれるので出席して欲しいといわれ,ソウル市内のレストランで3時間ほど会食と歓談をした。10名のうち,幸い3名ほど日本語の分かる人がいて,話しは盛り上がった。二次会へということになったが,私は翌日,帰国する予定であったので,残念なら失礼した。

日本に帰って早速,上田茂春編集長と水野勉代表に連絡をとり,原稿をお願いした。水野さんは諸般の事情で執筆できないが,資料を送るので,私に纏めてみて欲しいということになった。水野さんは,韓國山書會の会員であった日本語に堪能な孫錫慶氏(ソン・ギョンソク・손석경,日本山岳会名誉会員,2013年没)と以前,交流があった由であったが,日本山書の会との友好には発展しなかったという。

いただいた資料によってA4判約1頁に纏めて,上田茂春編集長に送って,補足していただいた。これは11月8日の中部地区山書の会の会合で配布し,確認してもらった。上田編集長は,さらに,保存している沢山の資料から,『月報』『研究』,特装本などの多くの書影を加えて詳細に纏め,A4判30頁を超す原稿にしていただいた。韓國山書會へは原稿を10月中旬に送付した。この原稿が総会に配布される資料である。また,2018年2月頃に韓國山書會の年報『山書』に韓国語に翻訳されて掲載される予定である。
なお,貴重な原稿なので,札幌の花島徳夫幹事が立ち上げている日本山書の会を紹介したホームページにその一部を載せてもらうように,交渉中である。

追記 2018年10月より花島が『日本山書の会』公式ホームページを作成し、併せて『日本山書の会のあゆみ』を掲載しました。